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ロード・エルメロイII世の冒険 3巻【あらすじと感想・考察】

adventure03cover ロード・エルメロイII世の冒険
ロード・エルメロイII世の冒険
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上巻を読んでから待ち焦がれて続けていた彷徨海の魔人完結編!

思わずうなってしまうような素晴らしい内容に圧倒的なボリュームと濃さのダブルパンチで、時間を忘れて読める素晴らしい一冊でした!

※ここから先は【ネタバレ】全開です!!!

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冒険3巻のストーリー

  1. 前巻終盤で彷徨海の魔術師・白若龍パイ・ルォロン神體がんたいの移植者・夜却やこうアキラと合流したロード・エルメロイII世一行だが、夜却朱音やこうあかねの魔術により神體が作り出した黒い”匣”の中にルォロンとアキラ囚われ、夜却本家に連れていかれる。
  2. 夜却の依頼ではなく、両儀幹也りょうぎみきやの「アキラを助けて欲しい」という依頼を優先したエルメロイII世たちは二手に分かれ、エルメロイII世とエルゴは夜却お抱えの面打ち師・斗彫源馬とぼりげんまに会いエルゴ専用の面を入手する。
  3. 夜却が儀式を始めたことに気付いたグレイと遠坂凛とおさかりんは夜却本家に潜入し、エルメロイII世とエルゴも合流。夜却雪信やこうゆきのぶの狙いを看破したエルメロイII世と幹也によってルォロンとアキラは儀式から生還する。
  4. グレイ・エルゴvsルォロンは引き分けのような形に終わり、ルォロンとアキラは彷徨海のジズと共に姿を消す。
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感想

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ロード・エルメロイII世シリーズでありFateでもある本作の濃さが感じられた!

あとがきで作者・三田誠先生も述べていたように、充実した2021年を送ったTYPE-MOONファンが満足できる濃密さを持った一冊でしたね。

Fateシリーズではあまり触れられない日本の魔術に彷徨海、神と竜、遠坂凛に両儀3名など本当に盛りだくさんでした!

これは書籍で500ページほどあるのも頷けます(笑)

内容としても冒険でスポットが当たり続けていたフームダニットだけでなく、事件簿らしいホワイダニットと理解しがたい魔術師の生き様が描かれていて凄く好みのストーリーでしたね。

2つの謎解きがあったという意味でも、非常に贅沢な一冊だったなと改めて思います。

やっぱりミステリーは謎が明かされていくあの瞬間がボルテージMAXなわけですから、それが2回も味わえたなんて本当に贅沢の一言に尽きますね。

遠坂凛

後述する2つの謎解きも素晴らしかったですが、個人的に今巻の凛は冒険1巻から登場し続けているエルメロイII世シリーズの中で1番らしく、輝いていたように感じました。

Fate/stay nightではヒロインであり、英霊や規格外の魔術師だらけであるFateシリーズだと『普通』寄りの凛ですが、彼女も規格外の才能なんだなと改めて思えましたね。

五大元素アベレージ・ワン』の特性と遠坂の魔術をフルに活かし、投影魔術で生成した疑似宝石によって相手の魔術に相性カウンターを入れる後出しじゃんけん魔術

ぶんちりー
ぶんちりー

架空元素・虚数を持っていた桜が養子に出されるのも納得

五大元素、力の流動と転換、宝石魔術、投影魔術といった凛から連想できる魔術要素が綺麗に噛み合った魔術で、凛の切り札に相応しいなと思えました。

他にも盾としてアイアスを出すなど、Fate/stay nightの主人公・衛宮士郎のカラーがちょくちょく垣間見えるのも嬉しいところ。

そして、疑似宝石を経済的と言ったり、SUVを乗り回して夜劫の本拠地に突っ込んだり、「まっかせなさい!」と勝どきをあげたりと凛らしさが全開で読んでいて気持ち良かったですね。

個人的に一番好きだったセリフはこれ。

知らなかった?傲慢じゃない人間は魔術師になんかならないのよ

ロード・エルメロイII世の冒険 3巻 彷徨海の魔人(下)

今回のホワイダニット

夜劫アキラと神體を巡る一連の騒動は、夜劫の2人の魔術師の思惑が絡んだものでした。(彷徨海のジズの思惑も絡んではいたけど)

夜劫朱音は、夜劫の奇跡とも言える才能・夜劫雪信を神體の拒絶反応から救うため。

夜劫雪信は、『特別』をやめ『普通』になるため。

前者は魔術の後継を重視し、より才に恵まれた子を活かすため孫を犠牲にするという、魔術師だからこその理屈。

後者は幹也に出会った両儀式のように、奇跡の才能を持ちながらも『普通』に生きることを望む、天才だからこその理屈。

どちらも理屈は分かりますが、理解できるかというと難しい魔術師の世界ならではのホワイダニットでしたね。

この魔術師の生き様と業が詰まったホワイダニットこそ僕がエルメロイII世シリーズを愛している理由ですから、ここは本当に最高オブ最高でした(語彙力)

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今回のフームダニット

冒険のメインディッシュであるフームダニット。

エルゴにどの神を喰わせたのか。

そして今巻の場合は、ルォロンにどの竜を喰わせたのか、夜劫の神は何なのかにも通ずるこのフームダニット。

2巻と合わせた『彷徨海の魔人』で最もボルテージが高まった瞬間はやはりこの神と竜の名が明かされた瞬間でしょう。

盛り上げ方が本当に上手で、文字通り読むのが止まらない状態に陥っちゃいました。

審神者として、エルメロイII世が神の名を審らかにする

汝、エルゴの喰らいし神の名は

ロード・エルメロイII世の冒険 3巻 彷徨海の魔人(下)

ここまで読んで止まれるやつおりゅ?おりゃん!

そんなエルゴが喰らった神は古代エジプト神話ではお馴染みの戦争の神・セト

そしてルォロンの喰らった竜は同じルーツを持つ太祖竜テュフォン

最後に、夜劫の神こそ大国主ことオオナムチ

僕の浅い考察を突き抜けた、血族殺しというルーツで繋がる神々と竜でしたね。

流石に繋げ方が上手過ぎてこんなんわからんて!

オオナムチが明かされた時点ではまだエルゴとルォロンはいい線いってるかなと思ってましたが、僕の妄想の真上を突き抜けていく深さでした。

両儀未那がエルゴに言った、神様は作れるという一言が指していた伝承の伝搬がこういう風に活かされるとは。

読んでいて感動しましたし、作者の三田先生には脱帽しちゃいますね。

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考察

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アーサー化の進むグレイ

ルォロンとの決戦で聖槍《最果てにて輝ける槍ロンゴミニアド》を使用したグレイ。

彼女の感覚では、金髪が少しだけ増えてしまったような気がした模様。

ロンゴミニアドの本来の権能とも言える能力《最果てにて礎なる夢の塔ロンゴミニアド・ミュトス》を使用したためかもしれませんが、グレイのアーサー化は着実に進行しているかのような描写です。

後述する神を還す方法を入手したからこそ、グレイの中に眠るアーサー王を還す決断は案外早く迫られるかもしれませんね。

今はまだ成長が止まるという段階ですが、この描写は更なる症状の悪化を暗示しているように思えてなりません。

手に入れた『神を還す』方法

エルゴの神を還す方法はエルゴの喰らった神が持っていた。

まさか過ぎる展開でしたね。

戦争の神・セトの権能神王屠る十四棺ベル・ジェト

相手を十四に分割して葬る権能。

そのもう1つの意味は神を葬り、世界へと還すためのもの。

つまりこの方法は、神を葬る=還すという考えに基づいた方法ということです。

ここで気になるのは、神を葬ることによって神を還すなら、神を宿したもの(エルゴやグレイ)はどうなるのか?というところ。

十四に分割して葬るという中々に強烈な方法ですから、とてもじゃないですけど人体が耐えられる方法には見えません。

そして一度神を還してしまえば、エルゴもグレイもただの人、良くてただの魔術師止まりではないでしょうか?

宿主であるエルゴやグレイが耐えられるのかはかなり疑わしいですよね。

もちろんこれは実際の肉体ではなく、宿っている神を分割して葬っているだけかもしれません。

ただ、かなり危険を伴いそうな、少なくともエルメロイII世が喜んで採用しそうな手法には見えないですよね。

この権能から何かを”略奪”して新たな魔術を創りだすのか、それとも何か抜け道があるのか。

まだまだそうは問屋が卸さないといった段階で、今後も目が離せなさそうですね!

冒険4巻の発売日

ライネスが遭遇したファラオの密室殺人事件を解くべくエジプトに向かうロード・エルメロイII世の冒険 4巻の発売日は2022年8月19日です!

三田先生は新しい環境で生活をスタートされたそうなので、ゆっくりマイペースに執筆していただければと思いますね!

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