舞台はエジプト!アレクサンドリア!ファラオ密室殺人事件!
事件簿のようなキャッチーなミステリータイトルに、アトラス院から登場のゲストキャラ!
更には時計塔のロード・メルステアも登場したりと、盛りだくさんであっという間に読み終えてしまう素晴らしい一冊でした!
※ここから先は【ネタバレ】全開です!!!
冒険4巻のストーリー
- 日本での旅を終え、ライネス・エルメロイ・アーチゾルデによって『ファラオ密室殺人事件』の解決に呼び出されたロード・エルメロイII世一行は、エジプト・アレクサンドリアを訪れる。
- 時計塔の中立主義筆頭・メルステアとアトラス院が共同で発掘作業を進めていた『もうひとつのアレクサンドリア図書館』において、未踏破の最深部・第四層に眠るプトレマイオスの心臓が盗まれ、セキュリティーキーを失った状態となってしまっていた。これがファラオ密室殺人事件の概要である。
- ロード・エルメロイII世とグレイはシンガポールで交戦したアトラスの六源・ラティオ・クルドリス・ハイラムと共に犯人捜しに動く。
- 一方エルゴと遠坂凛はアトラス院のシオン・エルトナム・ソカリスと交戦後、一時的に協力することにしアレクサンドリア図書館に裏口侵入。シオンの協力者・ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと合流し、探索を進める。
感想
面白すぎて読むのが止まらなかったんだが???
今巻はファラオ密室殺人というキャッチーなフレーズから始まり、イスカンダルの臣下・プトレマイオスや時計塔の中立主義筆頭ロード・メルステア、ゲストにはアトラス院のシオン、そしてエルゴが神を喰らった儀式の新情報やエルゴによく似たアレクサンドロス四世など、とんでもない情報量の一冊でした!
書いていても驚く情報量ですね(笑)
テンポよく気になる情報が明かされていくので、次は?次は?と読むのが止まらない構成でした。
三田先生は読者の心を掴んで離さないのが上手すぎる!
程よいテンポで、僕の興味を鷲掴みにしつつも燃え尽きないようにしてくれて、満足感と続きが待てない感が両立してくれていました!
今巻もイスカンダル関連の人物が登場したため、心理描写もとても丁寧。
この作品でイスカンダル関連の話が出ると、とにかくロード・エルメロイII世の、ウェイバーとしての部分やそれを見るグレイなど、メインキャラクターの心情がとても丁寧に描写されるので解像度がグッと上がりますよね。
ここら辺もFateシリーズを追っているファンとして、そしてこのシリーズの読者として楽しくてたまらない部分だと思います。
冒険らしさと事件簿らしさ
個人的に今巻で嬉しかったのは、これまでの『冒険』で強調されていた冒険らしさだけでなく、前シリーズにあった事件簿らしさも併せ持っていたところ。
未踏破の最深部から心臓が盗まれたのなら、それは魔術師から見ても密室での事件。
こういった内容を、ロード・エルメロイの解説を交えながら理解して行ったり、ホワイダニットを考えたり。
後半ではラティオがエルゴに執着するホワイダニットを、今は亡きラティオの弟・サイファの行動から見つけ出したり。
こういったホワイダニットが一つずつ繋がって、それぞれの人物・勢力の思惑が垣間見え、それぞれの利害関係が見えてくる面白さは事件簿の魅力の一つでしたからね。
探偵小説を読んでいるような推理の進み方を見られるのはロード・エルメロイシリーズならではなので、今巻は少し原点回帰にも近い形でこれこれ!という満足感も得られました。
考察
ファラオ密室殺人事件も気になるところですが、それ以上に気になってしまうのが本筋であるエルゴ関連の情報。
今巻も色々と開示されましたが、特に気になる2つについて考えてみましょう。
エルゴの基になった人物
エルゴの映像が映った時、プトレマイオスはこう発言しました。
征服王を受け継ぐ者…イスカンダル様の息子…アレクサンドロス四世…!
ロード・エルメロイII世の冒険 4 錬金術師の遺産(上)
イスカンダルの時代に生き、当時の記憶を持っているプトレマイオスがこう述べているのですから、エルゴの外見がアレクサンドロス四世と瓜二つなのは間違いないでしょう。
これだけでエルゴ=アレクサンドロス四世とはなりませんが、何らかの関係があるのはまず間違いないはず。
そんなアレクサンドロス四世とはどんな人物なのか?
史実では、イスカンダルの死後勃発したディアドコイ戦争時にはまだ幼かったため摂政が付くも、あまりアレクサンドロス帝国全体を支配することはできず、マケドニア本国まで撤退することを強いられます。
状況も状況だったためどの摂政とも上手くいったとは言い難く、アレクサンドロス四世が全権を実行すべきという声を疎ましく思った後の王・カッサンドロスにより暗殺されてしまいます。
端的に言ってしまえば、偉大なる王の息子として生まれるも、ディアドコイ戦争が原因で多くのディアドコイたちに利用されてしまい、最後は用済みと言わんばかりに暗殺されてしまう悲劇の人物。
この経歴を見る限りでは、エルゴ=アレクサンドロス四世とは共通する部分と矛盾する点の両方があります。
自身より強大な力を持つ人物たちに利用されてしまった、哀れな少年という点では共通していますし、アレクサンドロス四世は毒殺されてしまっており、墓まであるという点では矛盾しています。
なので直線的にエルゴ=アレクサンドロス四世とは考えにくいですが、近い運命を背負っていることからも外見だけではない繋がりがあると見て良さそうですね。
それこそ今登場しているプトレマイオスのように、アレクサンドロス四世のバックアップ的な存在だった可能性もあります。
アトラス院・山嶺法廷・彷徨海という3つの組織の思惑と叡智が絡まっているのがエルゴですから、正直何でもありな気もしてますが彼とアレクサンドロス四世の関係は目が離せないですね!
記録に残された『5体』の神
ラティオが解読した資料には、エルゴが神を喰らった儀式が描かれていました。
ここで驚きだったのは、その資料にはこれまで言われてきた3体の神だけではなく、もう2体、合わせて5体の神が描かれていた事です。
「この絵だと、四つ目の神體がないか?」
中心のポッドを取り巻く三つの神體-そのずっと下方に、もうひとつ、黒くて小さな直方体が描かれていたのだ。
「いや」
と、ラティオが否定した。
「五つだ」
指が動く。
反対側-壁画の上方に、五つ目の漆黒が描かれていた。
ロード・エルメロイII世の冒険 4 錬金術師の遺産(上)
これを読んだ時にはもうぶわっと鳥肌が立ちましたね!
前提条件が覆され、3体の神の謎もまだ解けていないのに新たなる謎が浮上してきてどうなるんだ!というワクワク感が物凄かったです。
そんな5体の神ですが、エルゴが喰らったのはやはり3体。
残りの2体は、何か別の役割があったようですね。
そして解読を進めたラティオ曰く、4つ目の神は『神を還すための神』だそうです。
アトラス院が実験を止めるために、保険として用意した神という事でしょうね。
この神は間違いなく最重要オブ最重要。
エルゴを救うために必要な神を還す手段。
グレイを普通の人間に戻すために必要な神を還す手段。
この2つを達成し得る、ロード・エルメロイIIの冒険におけるゴールと言える存在です。
そしてこの4体目は、理屈としても十分理解できますよね。
明らかに人の領域を逸脱した実験を行っているわけですから、止める手段、ブレーキとなるものが欲しいのは当たり前と言えます。
では5体目は?
まだ明かされて居ないこの5体目が、僕としては不気味で気になってしょうがないです。
エルゴに喰わせる3体と、それを還す1体。
これで十分完結しているはずなのに、何故か居る5体目。
この5体目は、ここまでの前提条件をすべてひっくり返してしまうような、大どんでん返しが隠されているように思えてしまいますね。
それこそFateにおける冬木の大聖杯が汚染されていたという、衝撃の事実のような大どんでん返し。
今いる登場人物全ての思惑の外にあり、全てをひっくり返してしまうような『悪意』がこの5体目には隠されているんじゃないかとワクワクしています!
冒険5巻の発売日
ファラオの密室殺人事件解決が描かれるロード・エルメロイII世の冒険 5巻の発売日は2022年12月31日です!
コメント
やっと俺達の事件簿が帰って来た。セキュリティを盗んだ犯人、弟の不可解な死、アレクサンドロス4世、3柱以外の神、ロードの協力、面白くなるピースが集まってきた!
ミステリーらしい続きが待てん!って感じで高まりますよね!
仰る通り面白くなるピースが盛りだくさんなので次が楽しみです。