世界と平和の終焉目前で終わった10〈上〉巻に続く10〈下〉巻。
今巻は魔王学院というシリーズの1つの集大成であり、最高傑作と言っても過言ではない内容の一冊でした!
ここまで魔王学院を読んできて良かった!そう思える一冊に仕上がっています!
※ここから先は【ネタバレ】全開です!!!
魔王学院10下巻のストーリー
- 前巻で姿を現した黒幕・《全能なる煌輝》エクエスに操られる樹理四神と神々の軍勢がディルヘイド首都・ミッドヘイズに侵攻するも、アノス・ヴォルディゴートはエクエスとの戦いを強いられ魔王軍・七魔皇老のみでの防戦となる。
- 神々の侵攻に苦戦を強いられるも勇者学院、アハルトヘルン、地底三大国、四邪王族といった面々の助太刀によって神々を退ける。
- エクエスの歯車に打ち勝ったミーシャ・ネクロンとサーシャ・ネクロン、突入してきたレイ・グランズドリィの助力によって全力で戦えるようになったアノスはエクエスに圧勝。
- ミーシャが《源創の月蝕》によって世界を作り変え、《運命の歯車》を取り除くことで世界は生まれ変わった。
感想・考察
まず最初に一つ言いたいことを言っておきます。
魔王学院を追ってきて良かった!!!
間違いなく魔王学院シリーズ最高傑作の1つであり、集大成でした!
ナンバリングにして10巻、計12冊かけてアノス様が蒔いてきた種が遂に花開くような、そんな素晴らしい内容でしたね。
そんな今巻は魔王学院の集大成と言えるような一冊に仕上がっていたので、感想と考察を気になったシーンごとにまとめていきます!

ぶっちゃけ感想メイン!
振り返ってみれば今巻はアノス様の活躍以上に登場した面々の活躍が刺さった1冊でしたね。
登場するたびに株が上がるエミリア
前巻でも僕がべた褒めしていた勇者学院の現学院長・エミリアですが、今巻もとにかくグッとくるシーンを見せてくれました。
最序盤にあったエミリアのシーンでこの1冊に一気に引き込まれましたね。
政治闘争に明け暮れていた勇議会の面々は、エクエスに服従すれば人間は見逃すという甘い言葉に揺らいでしまいます。
エミリアは必死に彼らを説得しようとしますが、魔族の血を引く彼女ほどアノスを信じられないと言われてしまったその時。
ナイフで自身の手首を切り裂き、流れ出る血で《契約》の魔方陣を描きながらアゼシオンへの愛と忠誠を示しました。
このシーンは本当に響きましたね!
初登場時からお仕置き転生まではひたすら嫌な奴だったエミリアが気づいたらこんなにも素晴らしい人物へと成長しているなんて…
このシリーズの登場人物を見渡しても、エミリアほど成長しているキャラは居ないかもしれないくらいです。
そんな彼女が直面したハードルがまたしても『血』というのも素晴らしい。
元々は行き過ぎた皇族至上主義であり、人一倍『血』にこだわっていたエミリア。
しかし差別に苦しんだ転生後の生活を経て、人は『血』で決まるものではないと理解したエミリア。
そんな彼女が勇議会の面々に放った一言です。
「くだらない。血がなんだって言うんですか。わたしの意思でも、わたしの心でもない。わたしが魔族か人間かすら関係がない。そんなものでは、なに一つ決まりません。なに一つ決まらないんですよ!」
魔王学院の不適合者 10〈下〉
これまでのエミリアの歩みを知っているからこそ、彼女の言葉は本当に響きますね…
そして彼女のこれまでの歩みがあるからこそ、これだけハッキリと大切なのは血でも種族でもないと言い切れるのでしょう。
シリーズを通してエミリアの転生後エピソードは素晴らしかったですが、今回はその集大成のような、そんなエミリアのスピーチでした!
2度と祖国ディルヘイドに足を踏み入れられなくなっても構わない。
有事にはアゼシオンのためにディルヘイドと戦っても構わない。
そう思えるくらいガイラディーテの民を愛し、ガイラディーテの民からの信頼を勝ち取っているのは見ていて嬉しくなりましたね。
前巻に続き今巻も僕のイチオシシーンはエミリアのエピソードでした!

ゼシアとパパのシーンもめっちゃいいから甲乙つけがたいけど
ミッドヘイズに集結する豪華なメンツ
アゼシオン勇者学院の勇者たち
アハルトヘルンの妖精たち
アガハ、ジオルダル、ガデイシオラの地底人たち
同じ魔族でありながらかつてはアノスと敵対していた四邪王族たち
これまでのシリーズでアノスが赴き、時には剣を交えた相手がディルヘイドの危機に駆け付けたのは胸熱でしたね!
作者の秋先生も集大成とおっしゃっていましたが、まさにその通りの展開ですよね!
王道ながら激アツ
次々と攻め込んでくる神々に対抗するように次々と助太刀に馳せ参じる豪華なメンバーには読んでいて物凄く盛り上がりました。
個人的にはそれぞれの神と共に『選定審判』を戦った地底人たちと神々のやり取りが凄く良かったですね…
エレオノールの危機に駆け付けるゼシアたち
僕のイチオシシーンその2。
神々の軍勢はディルヘイドだけではなく、かなりの戦力をアゼシオンにも差し向けてきます。
これに対抗するべくエレオノールが踏ん張りますが、《疑似紀律人形》の欠点を突かれた彼女は窮地に追い込まれます。
そんなエレオノールに助太刀したのが教育の大樹エニユニエンに預けていた1万人のゼシアたちでした。
「一生…懸命…」
「言葉…覚えた…です」
魔王学院の不適合者 10〈下〉
泣いた。全俺が泣いた。
これはエモ過ぎるだろ~~~
ずっとエレオノールが悔やみ、気にかけていたゼシアたち。
これまでメインで登場してきたゼシアは喋ることが出来ましたが、ほとんどのゼシアは満足に喋ることができないという状況でした。
そんな彼女たちが必死に言葉を覚え、母であるエレオノールに助太刀し、最後は感謝を述べる流れは美しすぎます。
エレオノールにとってもここは大きなターニングポイントになりましたね。
アノスパパ・グスタとセリス
僕のイチオシシーンその3。(何個イチオシするんだよ)
アノスの両親・イザベラとグスタを人質に取ることでアノスの動きを封じようとしたエクエスサイドでしたが、ここで立ち上がったのでグスタ。
いざという時はイザベラと二人で自決する覚悟を持って、護衛のイージェスを魔王学院への援軍として送り出したグスタでしたがここで驚きの展開。
「見ているか、アノス。これは、二千年前の俺が贈る魔法」
魔王学院の不適合者 10〈下〉
ここでグスタが《波身蓋然顕現》によって《万雷剣》ガウドゲィモンを握っていました。
グスタが転生したアノスの父・セリスであることは判明していましたが、その記憶や能力は全くグスタに引き継がれていませんでした。
そしてセリスが最期に放った 《波身蓋然顕現》 はいったい何のためだったのかも不明でしたが、ここで一気に繋がったような気がしますね!
セリスは 《波身蓋然顕現》 による「可能性の自分」に 《波身蓋然顕現》 を使わせ、これを繰り返すことで死後2千年間にも渡っていざという時のために 「可能性の自分」 を維持し続けていました。
面白い 《波身蓋然顕現》 の使い方ですよね。
これまでは便利な分身や持てない剣を扱ったりするための魔法という印象でしたが、可能性の自分を繋げるなんて使い方は予想外過ぎました!
この魔法作中でもトップクラスにチートだろ。
きっとこれがあったからこそ、グスタには記憶や能力が引き継がれなかったんでしょうね。

エモ過ぎんだろ…
しかしこれはマジで激アツですよね!!!
グスタが万雷剣を握り、その背後にセリスが描かれた挿し絵は素晴らしいの一言に尽きます。
我が身よりもディルヘイドを案じてイージェスを送り出したグスタ。
我が子の危機に最後の《波身蓋然顕現》を使うセリス。
2人の男らしさが前面に出た行動によって、アノスパパ2人のカッコよさがヒシヒシと伝わってきましたね!

イザベラとグスタはアノス様が転生するべくしてしてきた両親と思えるよね
レイの背中を押すシン
これまでスーパーハードコアパパとして娘ミサ・レグリアの交際相手・レイの前に立ちはだかり続けていたシン・レグリア。
もはや魔王学院お馴染みのコントでしたが、今回はその2人だからこそのやり取りが。
終滅の光に押されていたレイを激励したシン。
そんなシンの激励の仕方が彼なりのやり方でニヤニヤしてしまいました。
「世界も救えぬような男に、娘はやれません」
魔王学院の不適合者 10〈下〉
めっちゃ言いそうな気がしてきた。
口下手なシンなりの最大限の激励でほっこりしましたね!
レイは見事に役目を全うして世界を救ったわけだから、ミサとの交際はシン公認になるのかしら。(多分ならないw)
配下に頼るアノス様
最後にグッと来たのがエクエスとの戦いで最も信頼する3人(ミーシャ、サーシャ、レイ)をアノスが頼るシーン。
そもそもアノスは自身の滅びの根源が強すぎるため、全力で戦うというのが事実上不可能の状態でした。
世界を守るために戦っているのに、自分の力で世界を壊してしまっては本末転倒ですからね。
そんなアノスは根源が傷つきこれまでのような手加減が出来なくなってしまったので、強すぎる力をサーシャとレイに相殺してもらい、ミーシャに世界を守ってもらうように頼んでいました。
これまで”任せる”ことはあっても”頼る”ことがなかったアノスが、3人にそれぞれ言葉を選んで”頼る”シーンはなかなかにエモい。
3人に合った言葉をそれぞれ選んで真摯に向き合っているところが、「王」に相応しい器だなと改めて感じました!
だからこそアノス様は「魔皇」ではなく「魔王」なんだなと。
アノス様万歳!
魔王学院11巻の発売日
まだ続いていくとあとがきで明言された魔王学院。
新章が楽しみな魔王学院の不適合者 11巻の発売日は2022年3月10日です!
また、同日に画集も発売されるので要チェック!
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