母と娘の絆を取り戻すため、上条は極寒のロスをただ、走る!
インデックス!ステイル!神裂!
必要悪の教会が出てきて禁書初期の雰囲気を感じられつつ、薔薇十字が絡んでくる素晴らしい一巻でした!
読んでて楽しかったです!
前巻のラストで撃たれた浜面の状況も明かされましたしね!
※ここから先は【ネタバレ】全開です!!!
創約4巻のストーリー
- 12月26日、上条さん(とオティヌス)、インデックス、ステイル=マグヌス、神裂火織の5名はアメリカ合衆国ロサンゼルス(L.A.)で3000万人が『消失』した原因を特定するため、-20℃の寒波が来ている現地に向かう。
- 『消失』が起きた要因は、L.A.に本社を置くR&Cオカルティクス社に、学園都市&イギリス清教の混成部隊が総攻撃を仕掛けた作戦「オペレーション・オーバーロードリベンジ」だった。
- 神裂は、薔薇十字の魔術師・キトリニタスと交戦し、『消失』する。
- 上条さんはヘルカリアの母、メルザベス=グローサリーが、R&Cの移動拠点・ロジスティクスホーネットの開発者であることが発覚するも、メルザベスの潔白を突き止める。
- 上条さんvsキトリニタス開戦。(裏で一方通行の裁判、アメリカ大統領・ロベルト=カッツェvs副大統領・ダリス=ヒューレインなども開戦。)
- 上条さん、キトリニタスに勝利!『消失』した3000万人が戻る。
- R&Cオカルティクス社上層部をアレイスターが襲撃し、殲滅。
感想
まず最初に上条さんや、相変わらずハードスケジュール過ぎないかい!?
死にかけてから1日でL.A.まで出張は毎度ながらハンパねえぜ…
やっぱり上条さんの生命力が学園都市最大の禁忌では?
そして、インデックス!ステイル!神裂!
冒頭でも書きましたが、初期の禁書っぽさがあって懐かしさを感じました!
魔術絡みの事件が起きて、イギリス清教と協力して上条さんが解決に向かうの流れは様式美を感じずにはいられないですね!
そんな中、魔術サイドの解説役が土御門元春ではなく、オティヌスなのは新約からの流れと、寂しさが両方あって長寿作品の味わいみたいなものがありました。
全体では、非常にシンプルな流れで、登場人物も比較的少なく、各キャラの描写がしっかりとしていてとても読みやすかったです!
僕はカップリングの中で、上条さん×オティヌスがイチオシなのもあって、上条さんとオティヌスのやり取りがたくさんあったのもポイント高いです(笑)
そして、終盤の上条さんvsキトリニタスや、カッツェの熱い演説は読んでいてとても楽しいものでした!
科学と魔術の設定が凝っていながらも、キャラクターが熱くて芯を持っているところが、禁書の魅力だと再確認できました!
考察
今回もいろいろな情報がありましたが、個人的に気になった次の4つについてまとめていきます!
一方通行の狙い
学園都市統括理事長になってから、何か強い意志を示していた一方通行ですが、遂にその目的が明かされましたね!
学園都市の改革や贖罪のためとはいえ、自ら檻に入り、裁判を経て裁かれようとする姿勢は、少し疑問な部分がありました。
しかし、その狙いは、妹達の更なる救済だったとは少し驚きました!
打ち止めと妹達のためならば何でもする覚悟が改めて見えましたね。
流石、日本が誇るロリコン!
これまでちょくちょく妹達は登場していましたし、アニメでも街中を歩いている姿が描写されているので意識していなかったですが、彼女たちは存在を秘匿されているクローンです。
当然ながら、世界中から簡単に受け入れてもらえる存在ではなく、一人の人間として自由に暮らせる立場ではありません。
そこを解決することが、一方通行が統括理事長の座について真っ先に描いたプランだったわけですね。
このプランは、次の2つの相乗効果で成功し、世界中の多くの人々に妹達が受け入れられることになりました。
- 一方通行が悪人として振る舞うことで、妹達を禁忌の存在ではなく、実験の被害者として見てもらう。
- L.A.での戦闘にて、全世界にその姿を晒すことで、『消失』を解決しようとする勇敢な少女たちとして見てもらう。
クローンというマイナスを、より大きなプラスで帳消しにする一方通行の策は、見事にハマってくれましたね!
40巻以上出ている禁書で、遂に妹達が人権を得るのは感慨深いものがありました。
そして、この目的を達した一方通行が、次は何に向かって動いていくのかも目が離せません!
全ては打ち止めと妹たちのためと考えると、彼女たちに害を及ぼす可能性が高い学園都市そのものを壊しに行く可能性もあり得そうです!
浜面仕上とイギリス清教
前巻のラストで撃たれて倒れた浜面仕上。
彼は今病院のICUで、治療を受けている真っ最中の様です。
まだ助かったと確定していないことが、一方通行とイギリス清教最大主教・ダイアン=フォーチュンの会話で明かされました。
新約終盤で浜面に助けられ、彼を友人で恩人であると慕っています。
そんな浜面の窮地が許せないようで、一方通行に釘をさすシーンはとても印象的でした!
そっちで何があったかなんて泣き言はしらねえーんだよ。ここでチューブだのコードだのでICUに繋がれている浜面仕上が死んだらあなた、イギリスとの全面戦争になるわよ?
創約 とある魔術の禁書目録 4巻
いや~痺れちゃいますね。痺れちゃう。
これまでイギリス清教といえば、上条さんの味方という印象が強かったですが、トップが変わったことで大きく変化しましたね。
もちろん多くのメンバーは上条さんを慕っていますが、最大主教が浜面をここまで大切にしているのは、勢力図の変化と言えるでしょう。
しかしイギリスとの全面戦争とは大きく出たなw
統括理事長にまで圧力がかかっていることから、浜面は現実的な範囲で罪を償って、滝壺と共に自由に生きられる未来も見えてきましたね。
アメリカ副大統領ダリス・ヒューレインとキトリニタス
ダリスは敵役として、今巻のメインの一人でした!
アメリカ副大統領にまで上り詰めた彼が、アンナに下り、薔薇十字の魔術師・キトリニタスとしてL.A.の人を3000万人も『消失』させたのは衝撃的です。
そんな彼を動かしたのは、移民への恐怖でした。
ダリスはアメリカの名家出身で、超一流大学の首席卒業、秘書から政治家へと絵に描いたようなエリートコースを歩んできました。
そんな彼は、不法移民からスタートし、高校中退でも人々から愛され、大統領の座を勝ち取ったロベルト=カッツェを心の底から羨望し、憎んでいたようです。
自分を殺してエリートコースを歩み、政治家になってからも票のために全てに気を遣う。
そんなダリスからすれば、ありのままで人々から愛されるカッツェは、「こうありたい」自分だったのでしょう。
そして同時に、カッツェの成功で、自分の苦しい人生を否定されたように感じてしまったのでしょう。
これが原点となり、移民への恐怖から、巨大IT社としてベンチャーを傘下に収めてくれるR&Cに縋ってしまったようです。
そんなダリスの思想は、アメリカという国の問題を良く表現しています。
そしてカッツェの思想は、アメリカという国の魅力を良く表現しています。
アメリカという国は、移民によって発展している国ですが、昔からの自国民を守るためのシステムがあったりします。
例えば、公表はされていませんが、大学受験で白人が有利で、ユダヤ人やアジア人が不利なのは向こうでは常識です。
こういった文化は、単なる白人至上主義というわけではなく、アメリカという国の原点が、移民たちによって塗りつぶされないようにするために存在します。
要は、ダリスのように移民を恐れる既得権益層が一定数いて、強い影響力を持っているわけです。
しかしながら、やはりアメリカは移民に寛容で、アメリカンドリームのある国です。
僕の友人の父はイランからの移民で、今は大成功している研究者です。
移民でも成功するチャンスがあり、受け入れてもらえるのが、アメリカの魅力の一つです。
要は、カッツェのように移民ながらも、自分の力でのし上がっていく事が許容されるわけです。
この表裏一体である「移民とアメリカ」というテーマを、正反対の政治家二人を使って描いたのは非常に面白かったです。
ここ一年でBLM運動や大統領選挙など、アメリカも揺れていて注目する人も多かったので、かなりタイムリーなテーマなんじゃないでしょうか!
アメリカに長いこと住んでいた僕でも、こういった議論をしている人は実際に居そうだなと思える舌戦でした!
大統領と副大統領がショットガンで銃撃戦し始めたら世界中大混乱になっちゃうと思うけどね(笑)
キトリニタスに込められた意味
そして、そんなアメリカの問題を体現するダリスが、キトリニタスの名を与えられているのも象徴的でした。
キトリニタスとは、薔薇十字において至高の叡智を獲得するための作業である、「黒、白、黄、赤」のうち、第3の工程である「黄」を支配する者です。
ですがこれは、言い換えれば叡智至る4つ目の工程を、完結できないという意味でもあります。
オティヌス曰く、
俗世の欲に囚われてよそ見をしてしまうから、あと一歩の本質を見失ってしまう
創約 とある魔術の禁書目録 4巻
ため、多くの者が第4の工程を完結できないそうです。
既得権益や物事の「型」に縛られ、アメリカの魅力である自由と夢を否定してしまったダリスには、皮肉にもピッタリな名前ですね。
アンナ=シュプレンゲルの思惑
ラストでまた色々と話していたアンナ=シュプレンゲル。
正直チンプンカンプンなことも多かったです(笑)
まず最初に気になったのは、R&Cオカルティクス社が攻撃され、殲滅されるのもアンナの思惑通りということですね。
どうも彼女の狙いは、世界征服であったり、何かのトップに立つといった事ではないようです。
本人曰くそれはかつての『黄金』の時にお腹いっぱいになったそうです。
むしろ逆で、誰かの庇護下に入り、目いっぱい好き放題することの方が狙いのようです。
とはいえ、お眼鏡にかなう支配者も居ないようなので、いったいどうしたいのかまだ掴み切れませんね。
好き放題させてくれる支配者か、その器の人間を探すことが、アンナの当面の目標なのでしょうか?
『表』の世界の支配者は適任が居ないそうなので、『裏』の世界で探しているとなると、一方通行にちょっかいを出したりしているのも納得できます。
なので、僕はアンナが『裏』の世界の支配者になれる人物を探している説を推していきます!(当面は…)
新たな薔薇十字のメンバー
余談ですが、「不思議の国のアリス」の主人公・アリスや、「アラディア、あるいは魔女の福音」の女神・アラディアの名を冠する人が薔薇十字の一員として登場しました。
名前を呼ばれただけですが、ニュルンベルクの乙女=アイアンメイデンも居るそうなので、少し情報が明かされた形になりますね!
グレムリンは北欧神話の神々の名を冠していましたが、薔薇十字は小説や伝説の登場人物路線なのでしょうか?
ここも気になりますね!
創約5巻の発売日
薔薇十字の不穏な会話で終わった4巻に続く、創約 とある魔術の禁書目録 5巻の発売日は2021年12月10日です!
待ちに待った新刊が楽しみですね!
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