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ロード・エルメロイII世の冒険 1巻【あらすじと感想・考察】

adventure01cover ロード・エルメロイII世の冒険
ロード・エルメロイII世の冒険
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『ロード・エルメロイII世の事件簿』新章どころか新シリーズ開幕!

これまで描かれなかった仙人という東洋の魔術や、アトラス院に彷徨海、神を喰らった男などもうこれTYPE-MOON設定資料の見本市では?という素晴らしい濃密さ!

濃密な設定や手に汗握る魔術戦、Fate/stay nightからのゲストキャラ謎が解き明かされていくカタルシスなどシリーズならではの魅力が詰まった一冊でした!

※ここから先は【ネタバレ】全開です!!!

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冒険1巻のストーリー

  1. ロード・エルメロイII世とグレイはシンガポールで遠坂凛と6本の幻手を持つ記憶喪失の少年・エルゴに出会う。
  2. エルメロイII世たちはアトラスの六源・ラティオ・クルドリス・ハイラムにエルゴの身柄を引き渡すよう要求され、2度交戦し勝利する。
  3. エルメロイII世たちは仙人・ムシキと交戦し、エルゴの覚醒によって勝利する。
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感想

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何かすげぇことになったぞ(語彙力)

ロード・エルメロイII世の事件簿も非常に面白く、それでいてFate・TYPE-MOON世界の資料集にもなりそうな素晴らしい世界観の描写がありました。

まさに型月ファン必見と言えるシリーズなんですが、ロード・エルメロイII世の冒険は続編ということでまた更に壮大になったなという印象です!

今巻のタイトルにもなっている『神を喰らった男』エルゴはどうやら「冒険」のキーパーソンになるようですね!

「事件簿」でいうところのグレイの立ち位置に近いでしょうか?

ただ、事件簿では黒幕のドクター・ハートレスのイスカンダル神霊化計画においてグレイは重要人物というわけではなかったのに対して、エルゴは彼を生み出した3人の魔術師たちにとって間違いなく重要人物ですから、そこは決定的に異なってきますね。

いずれにせよ神を喰らったという、アーサー王に近づいていくグレイ以上の神秘ですから今後の展開が楽しみです!

ゲストキャラ・遠坂凛

シリーズを通して、必ず1エピソードにつき1人型月作品からゲストキャラを持ってくるのが恒例ですが、今回はなんとFate/stay nightのメインヒロイン・遠坂凛を持ってきましたね!

しかもまさかのシンガポールで海賊のコンサルタントをやっているという破天荒っぷり(笑)

ぶんちりー
ぶんちりー

アンタ何してんのォ!?

なんでも鄭和の沈没船をサルベージしにやってきたとかで…

今巻では魔術師としての一面が最大限描かれていて、SNではあまり注目されなかった凛の才能五大元素使いアベレージ・ワン」にもスポットが当たるなど大活躍でしたね!

やっぱりマスターとしてのイメージが強い凛ですが、魔術師としては超優秀な人材だというのを改めて感じられる上手い登場の仕方でした。

同時に、ウェイバーは第四次聖杯戦争を生き残った時点で特別だなと再確認できましたね!そらケイネスさんもお亡くなりになりますわ。

また、彼女の登場によって後述の時系列や世界線もボンヤリと掴むことができましたし、色んな意味で再スタートを切ったロード・エルメロイII世シリーズの記念すべき1巻のゲストキャラにピッタリでした!

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事件簿との違い

『ロード・エルメロイII世の事件簿』改め、『ロード・エルメロイII世の冒険』として再スタートを切った本シリーズ。

もちろん時系列や登場人物の立場の変化など様々な違いはありますが、その中でも事件簿とは決定的に異なるなと感じたことが2点ありました。

ホワイダニットではなくフームダニット

まず一番決定的だなと感じたのが、ロード・エルメロイII世の代名詞とも言えるホワイダニットwhydunit」が軸になっていないという点ですね。

事件簿では、ホワイダニットが犯人に相当する魔術師の犯行やトリックを考える際に最も重要視されていました。

これは、魔術師なんていう世の理からはみ出した人間が行う犯行において、どうやってや誰がは推理するだけ意味がなく、唯一意味があるのがどうしてホワイダニットだからという考えに基づいたものだからです。

しかし、冒険でキーになってくるのはエルゴが喰らったという3柱の神々です。

恐らくこれは今巻だけでなくシリーズを通してそうなのでしょう。

従って、最も解き明かすべき謎は「どうしてこのような事を行ったか?」ではなく「どの神を喰わせたのか?」、つまりちょっと意味の異なるフーダニットwhodunitフームダニットwhomdunitです。

冒険の核は、事件簿の物語の核としてあったホワイダニット、すなわち魔術師の生き様ではなく、フームダニット、すなわち神の在り様だということです。

物語の核がガラッと変わっているのは、事件簿と冒険という形でタイトルを別けるだけのインパクトを感じる違いでした。

ロンドンではなく世界

もう一つ決定的に異なると感じたのが、物語の舞台です。

ここでいう舞台とは、単なる場所ではなくて世界観そのものです。

というのも事件簿は舞台がロンドン(とその周辺)であったのに対し、冒険の舞台は1冊目からいきなりシンガポールです。しかも次巻では日本に向かうみたいですしね。

これは単なる場所の違いだけはなく、組織や文化、魔術、対象とする神秘の違いとなっています。

事件簿ではあくまで「時計塔」という組織を中心に描いていて、登場する魔術も基本的には西洋魔術(時計塔の魔術)でした。(アトラス院は置いといてプリーズ)

当然文化圏も西洋でしたし、対象とする神秘も西洋圏のものがほとんどです。

キーだった聖杯戦争のサーヴァントもやはり根本は時計塔の魔術理論です。

ところが、冒険ではいきなり「時計塔の外」の世界がガッツリと描かれていました。

今巻で登場する魔術なんて、既存のキャラが使っているものを除けばどれも時計塔の魔術ではありません。

ラティオはアトラス院の錬金術師ですし、ムシキは魔術組織・山嶺法廷さんれいほうていの仙人です。(追放されたらしいけど)

アトラス院はまだしも、山嶺法廷は思想魔術と呼ばれる東洋魔術の組織で、これまで型月作品ではほとんど触れられていない魔術形態です。

舞台がロンドンから世界に移ったことは、単なる場所のスケールだけでなく、魔術のスケールも大幅にアップしていると感じますね。

名前だけですが、どうも思想魔術は人間が運営する螺旋館という組織と仙人が運営する山玲法廷という組織があると明かされましたし、今後も新情報がモリモリ出てきそうです!

彷徨海の登場は確定していますし、広がった「魔術の世界観」はとても楽しみですね!

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考察

今巻はスタートの1冊ということもあって謎を多く残していますが、整理しておきたい3つの事柄について考えていきます。

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時系列と世界線

まずやっぱり気になるのが、時系列世界線ですよね!

わたし、数年前は戦争をしていたの

ロード・エルメロイII世の冒険 1 神を喰らった男

ザックリいうと、冒険は第五次聖杯戦争から数年後の、SNとは微妙に異なる独自のルートという世界線のようです!

事件簿はSNの前日譚という位置付けだったので、世界線の感覚が非常に掴みやすかったと思います。

ところが冒険は事件簿から数年後という設定ですから、自ずと一つの疑問が浮かび上がって来ます。

一体SNの何ルートの後日譚なんだ?

これはあとがきでも書かれていましたが、どうもコレ!という風に決まっているわけではないようですね。

スタンスとして、のちの解体戦争に繋がる「独自のルート」という位置づけで書き進めていくようです。

なので事実として分かっていることは、第五次聖杯戦争は無事に終わっていて、遠坂凛(と衛宮士郎)は時計塔に籍を置いているということですね。

また、まだ冬木の聖杯は解体されていないようです。

ですから、SNの3ルート(セイバー、凛、桜)全ての出来事を内包している可能性があって、ロード・エルメロイII世の物語を描けるような世界線だという認識が良さそうです。

もちろんこれまで通りSNの世界線に乗った、正史の作品であることは間違いないですが、いかんせんルート分岐のあるゲームが元になっているので多少の割り切りは読んでいくうえで大切でしょう。

エルゴと3柱の神

冒険のキーパーソンであるエルゴと、彼に喰われた3柱の神々は間違いなく最重要事項です。

改めて整理すると、エルゴは昔3人の魔術師によって作られた(神を喰わされた)、古い契約の遺産だそうですね。

どうも使用の順番がこの契約で決まっているようで、その順番とエルゴの製作者が明かされています。

  1. クルドリス家(アトラス院・六源)
  2. ムシキ(仙人、大妖怪・無支奇に由来する)
  3. 彷徨海

また、喰わせた神のうちの1柱がシンガポールで崇拝される水神・孫悟空であることも判明しています。

ムシキと水神

ここで思うのは、3人の魔術師が共同で3柱の神々を喰わせたとのことですが、恐らく孫悟空はムシキが喰わせた神だということですね。

というのもエルメロイII世が看破していたように、ムシキの由来となっている大妖怪・無支奇は孫悟空の原型だと言われています。

明らかに他の2人と比べて、ムシキは孫悟空との縁が深いですよね。

また、ムシキの動機は「神を喰らったエルゴを自身が喰らう」ことだそうですから、比較的簡単に使えそうな孫悟空をこの計画に使うのも納得できます。

3人の魔術師の動機

もう一つ気になったのが、3人の動機ですね。

ムシキは孫悟空の力を引き出したエルゴを見て、このように述べています。

クルドリスの執念が、彷徨海の怨念が、妾の好奇心が

ロード・エルメロイII世の冒険 1 神を喰らった男

それぞれ異なる動機がある事が、この一言からも分かりますね。

ムシキの動機は「神を喰らったエルゴを自身が喰らう」、つまり味わってみたいという好奇心によるものですが、他の2人は謎に包まれています。

彷徨海に関しては今巻で登場していませんが、クルドリス家の方はどうでしょう?

ムシキはクルドリス家を滅びるだけの家系と罵倒しており、ラティオのこれに対する反応は図星のようにも見えます。

執念という動機で表現されていることと合わせると、クルドリス家(ラティオ)の動機は、お家の存続なのかもしれませんね。

一種の未来予知ができるアトラス院でもトップの家系だからこそ、自らの滅びを悟って計画に参加した可能性は十分にあり得ます。

ラティオもまだエルゴ争奪戦からは降りていないようですから、今後の展開が楽しみですね!

冒険2巻の発売日

『両儀幹也』

住所とその名前だけがくっきりと書かれていたのだった。

ロード・エルメロイII世の冒険 1 神を喰らった男

ラストでとんでもない爆弾を投下して、2巻への期待感を煽りに煽ったロード・エルメロイII世の冒険。

そんなロード・エルメロイII世の冒険 2巻は2021年8月13日に発売されています!

彷徨海というFate世界での超重要キーワードがタイトルにあるだけでもうワクワクですね…ッ

冒険2巻の記事はコチラです!

事件簿ではアトラス院を取り扱ってくれましたし、山嶺法廷に螺旋館と時計塔に留まらないこのシリーズはホント凄い!

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