今回は箸休めのコメディ&ミステリー回!
シリアスなスパイバトルだったフェンド連邦編と打って変わって、笑いあり闇ありの、次章開幕に向けた前日譚となっていました!
※ここから先は【ネタバレ】全開です!!!
スパイ教室9巻のストーリー
- フェンド連邦編でのミッションを終え、休暇としてライラット王国の離島・マルニョース島で14日間のバカンスを楽しむ『灯』。クラウスが課したルールによって別行動となり、グレーテとエルナはクラウスの婚約騒動、ティアとサラは呪われた殺人事件、リリィ・ジビア・モニカは島に伝わる海賊伝説、そしてアネットは自由気ままに3つの事件に関わる。
- 3つの騒動を繋ぎ合わせた結果、マルニョース島では海軍によるスパイ道具開発が裏で行われており、その被験者としてクラウスの自称婚約者・ラフタニアの母が呪われた殺人事件で殺害され、ラフタニアが復讐として最後の殺人事件を引き起こしたことが判明する。そしてラフタニアに復讐をそそのかし、一連の事件をかき乱したのがアネットと判明。
- 一連の騒動を終え、バカンスを終えた『灯』は『暁闇計画』に対抗するため、1年間の離散を命じられ、各々が少数グループとして新たなミッションに就く。
- 1年後、ライラット王国で1年間の潜入ミッションを行っていたエルナとアネットは、ライラット王国の国家転覆に向けて動き出す…
感想
今回はギャグ多めの息抜き回&読者参加型ミステリー回!
フェンド連邦編開始前の前座・前日談としてのカラーが強かった5巻をよりコメディタッチにし、シリアス展開多めだったフェンド連邦編のガス抜きにもなるような1冊でしたね。
とはいえ今回の担当キャラがアネットだったこともあり、ミステリーの裏にはアネットらしい”毒”が散りばめられていた内容でした。
ハンバーグ怖すぎィ
最初は短編集に近いテイストだなと思いながら読んでいましたが、これ殺人犯=ラフタニアじゃね?と思ってからは続きが気になってガンガン読み進めることに(笑)
昨晩布団に入ってから読み始めたのですが、結局寝る前に読み切ってしまいました。
今回は公平なミステリーに近い作りになっていたのもあり、読者も『灯』のメンバーたちと同じように犯人を推理しながら読み進められるのがとてもグッドでしたね!
コメディ面も各キャラの特徴がしっかり立っていて、実行班3バカ(リリィ・ジビア・モニカ)の暴走っぷりや『黒髪のサキュバス』ことティアの暴走っぷりなど、何やってんのこの子たちw的な面白さが沢山見られたのもナイス。
前巻で一気に成長速度を速めたサラに対するティアのモノローグや、モニカとリリィの今の関係性、グレーテとクラウスのやり取りなど、各メンバー間での人間関係の変化にもスポットが当たっていて程よい箸休めとなっていましたね。
次のミッションは『灯』が長期間バラバラになるのが確定しているので、時間・経験と共に変化するメンバー間の関係性を改めて把握できたのはいい下準備だったように感じています。
一年間-僕たち『灯』は離散する
スパイ教室 09 《我楽多》のアネット
『進化』の見せ方
元々落ちこぼれだった『灯』のメンバーたちの成長・進化を見せる方法は、それこそ色々あると思います。
例えば1巻であった「打倒クラウス」や、ナルトやドラゴンボールのような修行シーンを入れたりなど。
そんな中で本作が選んだ”見せ方”は、コードネームと口上の変化。
コードネーム《花園》咲き狂う時間です
など、各メンバーが口にするアレですね。
これを《秘武器》としてバージョンアップさせるのは、ライトノベルらしさもある分かりやすい表現でいいなと感じました。
どんな能力で、どんな使い道があるのかな?
これは『灯』メンバーが初登場した時や、敵のスパイが登場した時などで毎回想像するのが楽しくなる部分。
この”能力”の部分にテコ入れをするのは、今後読み進めて行くうえでも楽しみが1つ増えて嬉しいですね!
今回先んじてお披露目されたアネットの《秘武器》もなかなか面白かったですし、《失楽園》《悪戯娘》《夢幻劇》《万愚節》《天邪鬼》《付焼刃》《高天原》の7つがどんなものなのかも楽しみです。
考察
アネットが進む方向性
今巻でお披露目されたアネットの新境地・《秘武器》《我楽多》
タイトルにもなっている《我楽多》は、武器作成が特技のアネットらしい能力。
アネットが『他人に人を殺させる』ために作る、彼女の悪意が宿った凶器。
スパイ教室 09 《我楽多》のアネット
自身の悪意と道具によって、他人にミッションを遂行させるやり口は、《紫蟻》によく似ているなと感じました。
洗脳こそしていないものの、得られる結果に関しては紫蟻とほぼ一緒ですからね。
当時の灯メンバー(特にティア)からは糾弾もされていたこの能力を、アネットとクラウスがどのように発展させていくかは見ものですね。
”正しい”道に進まず、悪意に満ちた方向へ発展していけば紫蟻そのものになってしまいそうですし…
ただ、クラウスはそんなアネットが見出した方向性に対して意を唱えることはなく、成長の方向性に感動すら覚えていました。
ここはアネット自身も口にしていたように、『灯』の存在そのものがアネットを”善”の方向性へ導いているという事かもしれませんね。
「一体いつから、お前は『灯』に情を持ってくれたんだ?」
「オモチャですよ。俺様にとって、姉貴たちは」
アネットはくるりと反転し、いまだバーベキューで盛り上がっている少女たちの方を見た。火力の調整がうまくいかなくて、猛る炎を慄き、ぎゃーぎゃーと騒いでいる。
それを見つめる彼女の右目は煌めき、口から「ただ」と言葉が漏れる。
「俺様のとびっきりお気に入りのオモチャでー《我楽多》ですっ」
スパイ教室 09 《我楽多》のアネット
エルナとアネットのコンビ
そんなアネットとコンビを組んで、長いミッションに就いたのはエルナ。
ミッション内容はライラット王国に潜入し、世界最強のスパイとすら言えそうな『ニケ』率いる『創世軍』の弱体化を行う事。
目標達成のために、彼女たちはライラット王国の国家転覆を企てているようでした。
クラウスを含めた『灯』が真っ向から戦っても、負ける可能性がある『ニケ』
こんなトンデモスパイがいる国だからか、慎重に弱体化を図るのは納得ですね。
そんな重要ミッションに就いた二人ですが、成長の方向性や特徴から考えると、かなり適任なようにも思えます。
他者を操る方向へ進化しつつあるアネット。
”不幸”という事象を利用し、他者の心理を誘導してきたエルナ。
ティアほど分かりやすい訳ではありませんが、2人とも人心掌握・心理誘導という点では強みを持っているメンバーです。
エルナが他者を味方につけ、アネットがその人らに手を汚させる。
今巻のラストであった、ホームレスたちが『創世軍』の兵士を殺害したような手法で今後も勢力を拡大していくのはイメージが湧きます。
エルナがどう感じるか、そしてエルナの心理誘導がどこまで伸びるかは未知数ですが、相性が良さそうなこの2人の暗躍は次巻の1番の見どころになりそうですね!
暁闇計画の発案国・ライラット王国
最後に1つ感じたのは、暁闇計画とライラット王国の親和性。
以前考察しましたが、僕は暁闇計画は”弱者の積極的排除”による世界恐慌対策だと考えています。
そしてライラット王国は超格差社会であり、貴族が平民を虐げる典型的な”強者のため”の国家。
もし本当にライラット王国が暁闇計画の発案国であるとすれば、こんな国で平民を虐げている為政者が考えそうな計画なので、暁闇計画の予想は更に信憑性が高まってきたかな?と思います。
とはいえ、そもそも本当に暁闇計画はライラット王国発祥なのか?という疑問もありますし、まだまだ目が離せませんね!
スパイ教室10巻の発売日
先にスパイ教室 短編集04 NO TIME TO 退が2023年3月17日が発売予定!
スパイ教室 10 《高天原》のサラの発売日は2023年7月20日です!
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